福島県いわき市の「へそ石」にSFを見た。

アメリカ映画『ゴーストバスターズ』(1984年)を初めて観たのは小学生高学年の頃だろうか。
金曜ロードショーか日曜洋画劇場かは覚えていないが、テレビで視聴したのは間違いない。
当時はマシュマロマンの人形やら立ち入り禁止標識の前に立ち往生するゴーストが描かれたTシャツやらポスターやらのグッズが世間には蔓延しており、作品そのものを視聴する以前に『ゴーストバスターズ』体験を刷り込まれていたように思う。一種の社会現象のようなものであったのではないかな。


© COLUMBIA PICTURES




さて、僕の非常に狭い観察眼からすると『ゴーストバスターズ』は超常現象に科学技術で対抗する初の作品(映画・アニメ・漫画問わず)であると認識している。
これまでの幽霊退治というと、海外ではエクソシストによる悪魔祓い、日本ではお坊さんや陰陽師によるお祓いと目には目を、超常現象には超常現象で!といった様式が一般的であった。
そんな中、小型原子炉を動力源とするプロトンパックを駆使して害獣駆除の如くゴースト退治に明け暮れるゴーストバスターズがクールに見えたものである。
更に、エクソシストやお坊さん、陰陽師たちはその筋の血を継いだ人間、所謂生まれながらのエリートのみが務めることができる聖職という色が濃いが、ゴーストバスターズは市井の人々が努力や失敗を積み上げた末に獲得したテクノロジー(もちろん、サイエンスフィクション上の似非科学だけど)を駆使して超常現象に立ち向かっていく。こんなところにもグッとくる。
なんともアメリカ映画らしい設定だ。

いちいち面倒なことを書いてしまったが、『ゴーストバスターズ』は頭を空っぽにして思い切り楽しめる娯楽映画の最高峰にある作品だ。未見の方は是非ご覧になって頂きたい。




閑話休題。

昨年(2018年)のゴールデンウィークに福島県いわき市を観光で訪れてから不思議な縁が出来たもので、今年の初頭から仕事でも同市の一企業とお付き合いさせて頂いおり、いわき市にたびたび出張している。
そんな仕事の合間、自転車趣味(筆者は自転車趣味である)がきっかけで親しくなった先方の担当者にいわき市内のマニアックな観光地に案内して頂くことになった。

いわき市中之作、永崎海岸の龍ヶ崎という岬にある『へそ石』である。

この永崎海岸も3.11の震災で壊滅的なダメージを受けたそうだ。現在は綺麗に復興されたが、かつては堤防が低く、水平線を見渡せる美しい海岸線であったという。

復興事業に因って構築された巨大な堤防をぐるりと渡ると『へそ石』にご対面である。

向かって右側の不思議な石が『へそ石』。
この『へそ石』、10年ほど行方不明になっていたそうだが、2014年ごろ、震災復興工事の際に発見された。
実は『へそ石』には、動くと「海が時化る」・「祟りがある」等の曰くがあるそうだ。そこで発見後にコンクリートでガチガチに固めて動けなくしてしまったのが今のお姿だ。
『へそ石』自体は波の浸食作用によって作り出された天然のものだそうだが、この石が持つ超常現象を恐れ、それを封じるために人類のテクノロジー(コンクリート)を持ち出してしまうあたりに、ほのかにSFの香りを感じてしまったのだ。

伝説の『へそ石』、人々の恐れ、それを封じるテクノロジー。

一つのドラマを紡げそうではないか!

ついでにこの『へそ石』、2018年秋に火野正平氏が視聴者からの手紙に基づき自転車で全国を旅するNHKの「とうちゃこ」という番組でも訪問されたそうだ。(ここで冒頭の自転車趣味の話と接続される)

更にネットで『へそ石 いわき市』で検索すると、「千葉県まで行って戻ってきた」、「鮑石・甲石」なる奇岩等の不思議な話で溢れているので是非調べてみてほしい。

未来永劫『へそ石』が動くことなく、いわき市が平和でありますように。同市訪問の際、3.11の爪痕を見るに、切に願うものである。




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