アンタ、この前までオッサンだったやん!映画『クラウドアトラス』

映画『クラウドアトラス』(2012年)を鑑賞。

映画『マトリックス』(1999年)の映像革命で名声を手にしたウォシャウスキー兄弟による、人種・ジェンダー・過去から超未来と年代と、何もかもを超越した物語で、ジャンルとしてはSFにあたるのであろうか。非常に見応えがあった。

ここから同作品の感想を記すべきなのであろうが、そうはいかない事件が発生した。
レビューとかが気になる人は「この映画は☆3個っす!」とか「ネタバレ注意」とかいうヤフー映画レビューでも参考にしてほしい。
僕が触れたいのはもっと重要なことなのである。むしろしょうもない感想を記すよりも、同作品の深淵を覗くきっかけになるかもしれない。




これより本題に入る。
視聴後、DVDに収録されているウォシャウスキー兄弟によるオーディオコメンタリーを観た。観たのだが・・・
そこにはお馴染みのウォシャウスキー兄弟ではなく、ウォシャウスキー弟(以下、弟)と、何故か見知らぬ派手な中年女性が登場。そして当たり前のように中年女性が『クラウドアトラス』について語り出した。
何事かと食い入るように見ているうちに、僕は気付いたのだ、彼女がウォシャウスキー兄(以下、兄)が女装した姿であることに!!

頭が混乱し、しばしコメンタリーの内容が頭に入ってこなかったが、冷静に考えると、『クラウドアトラス』という作品、「ジェンダーを超越した」と前述したように、例えば役者の一人、ヒューゴ・ウィーヴィング(『マトリクス』のエージェント・スミス)が女看護師を演じるなど、男性役者が女性、女性役者が男性に扮するキャスティングを敢行している。
要するに、兄は「俺も役者に負けてらんねぇ」とばかりに、女装してコメンタリーに挑んだのだと僕は勝手に解釈し、粋なことをやるもんだと、これまた勝手に感心したのだ。
しかし、僕の解釈も感心も激しく間違っていた。兄は見た目どころか肉体も女性に変身していたのである。それぐらいこの作品に入れ込んでいたのだ・・・いや、違うか・・・
色々と調べてみると、兄は物心ついた頃からトランスジェンダーとしての悩みを抱えていたらしい。そして2008年ごろに性別適合手術を受け、男性 ローレンス・ウォシャウスキーから、女性 ラナ・ウォシャウスキーへと変身していたんだ!
そう、ウォシャウスキー『兄弟』は、ウォシャウスキー『姉弟』になっていたのだ。




女性となり、永年の深刻な問題から解放され、本当の自分を手に入れたことは真に喜ばしいことだと思う。
ただ、ヒトコト言わせて欲しい。
wikipediaによると、兄が女性に変身した姿を公にしたのは『クラウドアトラス』でのオーディオコメンタリーが初めてだという。
だったら、せめてコメンタリー冒頭で少しハニカミながら「私、この作品に倣って女性に変身したの・・・」ぐらい説明してくれてもいいんじゃないの!?『マトリックス』から熱狂的ファンである僕に水臭いじゃねぇか。
って・・・実は世間的にはラナ・ウォシャウスキー氏自らがトランスジェンダーへの理解を深めてもらうために既に堂々と公表していたらしい。
どうも僕の熱狂的『マトリックス』ファンというのも怪しくなってきた。

まぁ、それは置いておいて、この一件で『クラウドアトラス』という作品はますますミステリアスな魅力を増したし、ウォシャウスキー『姉弟』の作品をもう一度見直したい気持ちになった。きっと以前とは異なる味わいであろう。映画とは人生そのものなのだから。

最後にもうひとつ。

2016年、ウォシャウスキー弟も性別適合手術を受け、晴れてウォシャウスキー『姉妹』になったことも、そっと添えておきたい。

ウォシャウスキー『姉妹』の今後の活躍を期待したい。

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